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吉村・藤井研究室
山田研究室

Simulation And Virtual Environment

東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
東京大学人工物工学研究センター

2.3. ボリュームデータの可視化に関する研究

 「見えないものを見たい」というのは,およそ人類の根源的な欲求である.人々は,遠く人類の黎明期から夜空を見上げ遠い星々に思いをはせ,揺れる穂に風を見ていたことだろう.

 そして,科学の歴史も「見えないものをみる」という可視化の技術とともにあった.人間の欲求は,遠くの銀河まで見通すことができるハッブル望遠鏡や,生命活動の本質である遺伝子の発現の蛍光標識によるモニタリングなど,数々の可視化を実現してきた.

 今日,計算機と通信技術の爆発的な進歩により,膨大なデータが高速に処理できるようになった.その規模はもはや人間が的確に処理できる能力を超えつつある.そのアンバランスを解消するのが近年の技術革新著しいコンピュータグラフィックスを用いた仮想環境における可視化である.大規模高速計算機を利用した数値シミュレーションや超高精度の計測装置から得られる大量の科学技術データの直感的な理解や効果的な解析を支援するサイエンティフィックビジュアライゼーションは宇宙物理学,気象学,構造力学,医学・生物学,量子科学などの自然科学だけでなく,工学全般,さらにはビジネス界にいたる,あらゆる分野に浸透している.

 特に計算科学の分野においては,近年の計算資源の発展に伴って,計算モデルの大規模化や詳細化がますます進んでいる.また,計算科学のあらたな活躍の場として注目されている地球環境問題においては,さまざまな利害関係が衝突するためにいっそうの市民参加が求められている.しかしながら,科学技術の高度化により,専門知識を持たない者がそのような対話に参加するのは非常に困難な状況となっている.したがって,視覚的な効果により理解を補助する可視化技法の向上が不可欠である.さらに,そのような分野で適応される計算モデルには現実の事象と同じく,内部情報をともなった3次元のボリュームデータとして表されているものも多い.したがって研究者の間では,そのようなボリュームデータの可視化を簡便に行う技法に対する関心には根強いものがある.しかし,そもそも3次元ボリュームデータを扱う際には,データ量そのものが膨大になることや,2次元ディスプレイに描画するアルゴリズムの計算負荷が非常に高くなることなどの困難が存在する.

 本研究で対象としているボリュームビジュアライゼーションの目的は,通常は見ることのできないボリュームオブジェクトの内部を探索し従来は解析が困難であった複雑な構造や振る舞いを理解するための視覚的な洞察手法を提供することにある.そのため,表現,モデリング,操作,レンダリングのすべてとかかわりを持ち,対話的なグラフィックスやイメージ処理や,変換,切断,分割等のボリュームデータセットからの情報抽出,ボリュームの半透明化などを用いて,データセットの内部をつぶさに観察し,そこから意味ある情報を抽出するための一連の技法を備えていなければならない(図1).ボリュームビジュアリゼーションは,人体をX線CT装置やMRIでスキャンして行う3次元画像診断を最大の利用分野として普及し,さらに,工業用X線CT画像による非破壊検査,空港での手荷物検査,資源探査など,物体の内部構造を詳細に観察するために利用され応用分野が拡大している.さらに数値シミュレーションの計算結果を可視化する応用分野においては,3次元スカラ場に定義された圧力,温度,などの物理量の3次元的分布や構造,更には動的な振る舞いを分かりやすく表示することにより,流体,気象,化学反応などの研究やエンジニアリングに利用されている.

ボリュームビジュアリゼーションのフロー図
図1: ボリュームビジュアリゼーションのフロー図

参考文献