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藤井研究室

Simulation And Virtual Environment

東京大学 大学院工学系研究科 システム創成学専攻

3.1.3. マイクロ引張試験機の最適設計(名古屋大学との共同研究)

(東京大学人工物工学研究センター、ケンブリッジ大学設計工学センター、松下技術研究所との共同研究)

マイクロ引張試験機の最適設計に適用した。設計対象とするマイクロ引張試験機を図1に示す。 試験機全体が単結晶シリコンチップからエッチングによって加工される。チップ面積は約1cm2 である。測定者が荷重レバー(Loading lever)の端部にz方向の荷重Fを与えると荷重レバーがねじれ梁 (Torsionbar)の軸周りに回転し、試験片に引張荷重fsが加わる。 このとき、荷重点のz方向荷重Fおよび変位Xを直接測定する。

この測定結果から試験片の荷重fsとのびysを簡易式により求め, その関係からマイクロ試験片の物性値を求める。 (測定の原理は次の通りである。荷重Fは、試験片破断前には、 試験片自体の引張荷重fsおよびねじれ梁の回転モーメントMtと釣り合い、 試験片破断後は、回転モーメントMtのみと釣り合う。

荷重FのうちMtと釣り合う成分FtとXの関係は破断後の測定から得ることができ、 fsと釣り合う荷重FsはF−Ftにより求められる。試験片の荷重fsとのびysの関係を、 簡易式 fs=(L2/L3)F, ys=(L3/L2)Xを用いて求める。 ただし、L2とL3は荷重レバーのyおよびz方向の寸法を表す。

この測定原理が成立するために次の設計要求が課される。 (a) 試験片部分が最初に破断しなくてはならない, (b) FとXは測定可能でなければならない, (c)FsはF−Ftから求めるのでFs〜Ftでなくてはならない, (d)簡易式が適用できなくてはならない。

本設計では,上記の4種類の設計要求と11個の設計変数からなる設計問題を解いた。 計8000回の3次元静応力解析を伴う自動設計を行った結果, 名古屋大学の研究グループが経験に基づく試行錯誤によって既に得ていた 設計解とほぼ同程度の設計満足度を持つ設計解を自動的に得ることができた。 図2にその形状の比較を示す。従来の経験に基づく試行錯誤的手法では、 設計解を得るまでに多大な労力と時間を必要としたことを考えると 本システムの利用は極めて有効であると言える。