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: 幾何学非線形 : 増分型仮想仕事の原理 : 増分型仮想仕事の原理   目次

解説

材料非線形問題の解法には、一般に増分法が用いられる。 増分法では、 時刻 $t$ の時点で釣り合いが達成されている状態からスタートして、 時刻 $t + \Delta t $ の時点での釣り合い条件を求める。

時刻 $t$ の時点ではすべての物理量が既知であるとする。 一方、時刻 $t + \Delta t $ の時点では外力のみが既知である。 そこで、時刻 $t$ での接線剛性を求め、 そこからまず、 未知数である時刻 $t$ から 時刻 $t + \Delta t $ への変位増分を求め、 続いて、歪み増分および応力増分を順次求めていくことになる。

この過程は一般的に非線型である。 増分幅 $ \Delta t$ が大きければ、 接線剛性を時刻 $t$ で評価しているので、 一回では釣り合いがとれないことが多い。 そこで、静的/動的陰解法のように、 不釣り合い力に基づいて変位増分を更新し、 不釣り合い力が十分小さくなるまで この過程を繰り返す手法がとられることが多い。

あるいは、静的/動的陽解法のように、 増分ステップごとに一度だけ変位増分を求め、 そのかわり、逆に増分幅 $ \Delta t$ を十分小さくとって、 不釣り合い誤差が無視できるようにする方法もありうる。

7.12 より、 時刻 $t + \Delta t $ における微小変形問題の仮想仕事の原理式は、


$\displaystyle \int_V
{}^{t + \Delta t} [ \sigma ] : \delta {}^{t + \Delta t} [ \epsilon ]
\mathrm{d} V
=
\delta {}^{t + \Delta t} R$     (7.15)

さらに、


    $\displaystyle \delta {}^{t + \Delta t} R$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \int_V
{}^{t + \Delta t} \{ b \} \cdot \delta {}^{t + \Delta t} \...
...}
{}^{t + \Delta t} \{ t \} \cdot \delta {}^{t + \Delta t} \{ u \}
\mathrm{d} S$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle -
\int_V
\rho {}^{t + \Delta t} \{ a \} \cdot \delta {}^{t + \Delta t} \{ u \}
\mathrm{d} V$ (7.16)

ここで、 $ \delta {}^{t} \{ u \} $ は仮想変位、 $ \delta {}^{t} [ \epsilon ] $ は仮想歪み である。

まず、上式を増分分解する。

変位 $ {}^{t + \Delta t} \{ u \} $ を増分分解すると、


$\displaystyle {}^{t + \Delta t} \{ u \} = {}^{t} \{ u \} + \Delta \{ u \}$     (7.17)

ここで、 $ \Delta \{ u \} $ は変位増分である。

歪み $ {}^{t + \Delta t} [ \epsilon ] $ を増分分解すると、


$\displaystyle {}^{t + \Delta t} [ \epsilon ] = {}^{t} [ \epsilon ] + \Delta [ \epsilon ]$     (7.18)

ここで、 $ \Delta [ \epsilon ] $ は歪み増分である。

これら変位および歪みの変分をとると、


$\displaystyle \delta {}^{t + \Delta t} \{ u \} = \delta \Delta \{ u \}$     (7.19)


$\displaystyle \delta {}^{t + \Delta t} [ \epsilon ] = \delta \Delta [ \epsilon ]$     (7.20)

また、応力を増分分解すると、


$\displaystyle {}^{t + \Delta t} [ \sigma ] = {}^{t} [ \sigma ] + \Delta [ \sigma ]$     (7.21)

ここで、 $ \Delta [ \sigma ] $ は応力増分である。

以上より、増分型の仮想仕事式は、


$\displaystyle \int_V
\Delta [ \sigma ] : \delta \Delta [ \epsilon ]
\mathrm{d} ...
...Delta t} R
-
\int_V
{}^{t} [ \sigma ] : \delta \Delta [ \epsilon ]
\mathrm{d} V$     (7.22)

さらに、


    $\displaystyle \delta {}^{t + \Delta t} R$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle \int_V
{}^{t + \Delta t} \{ b \} \cdot \delta \Delta \{ u \}
\mat...
...t_{S^{dist}}
{}^{t + \Delta t} \{ t \} \cdot \delta \Delta \{ u \}
\mathrm{d} S$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle -
\int_V
\rho {}^{t + \Delta t} \{ a \} \cdot \delta \Delta \{ u \}
\mathrm{d} V$ (7.23)

次に、非線型項である最右辺の接線係数を求める。

まず、


$\displaystyle \lim_{ \Delta t \to 0 } \frac{ \Delta [ \sigma ] }{ \Delta t }
\to {}^{t} [ \dot{\sigma} ]$     (7.24)


$\displaystyle \lim_{ \Delta t \to 0 } \frac{ \Delta \{ u \} }{ \Delta t }
\to {}^{t} \{ \dot{u} \}$     (7.25)

したがって、接線係数は、


    $\displaystyle \lim_{ \Delta t \to 0 } \frac{
\int_V
\Delta [ \sigma ] : \delta \Delta [ \epsilon ]
\mathrm{d} V
}{ \Delta t }$  
    $\displaystyle \to
\int_V
{}^{t} [ \dot{\sigma} ] : \delta \Delta [ \epsilon ]
\mathrm{d} V$ (7.26)

さらに、 応力増分の式 7.14 より、 これを増分形にして、


$\displaystyle \int_V
{}^{t} [[ C ]] : \mathrm{d} {}^{t} [ \epsilon ]
: \delta \Delta [ \epsilon ]
\mathrm{d} V$     (7.27)

なお、ここで用いられている変数としては、 材料定数、 時刻 $t$ でのすべての状態変数および、 荷重 $ {}^{t + \Delta t} \{ b \} $ $ {}^{t + \Delta t} \{ t \} $ $ {}^{t + \Delta t} [ \epsilon^o ] $ $ {}^{t + \Delta t} [ \sigma^o ] $ は既知であり、 $ {}^{t + \Delta t} \{ u \} = {}^{t} \{ u \} + \Delta \{ u \} $ $ {}^{t + \Delta t} \{ a \} $ は未知であり、 一方、 $ \delta \Delta \{ u \} $ は任意の値をとり、 $ \delta \Delta [ \epsilon ] $ $ \delta \Delta \{ u \} $ より導出される。

また、 時刻 $t + \Delta t $ での 変位 $ {}^{t + \Delta t} \{ u \} $ 、 応力 $ {}^{t + \Delta t} [ \sigma ] $ については、 各増分ステップごとに得られた 変位増分 $ \Delta \{ u \} $ 、 応力増分 $ \Delta [ \sigma ] $ を用いて更新していく。


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Hiroshi KAWAI 平成15年4月19日