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: 初期応力増分 : 応力歪み関係 : 応力歪み関係   目次

解説

微小変形微小歪み問題を有限変形微小歪み問題に拡張する。

微小歪みテンソル $ {}^{t} [ \epsilon ] $ を Almansi歪みテンソル $ {}^{t} [ A ] $ に置き換える。 すると(初期歪みと初期応力を無視する)、


$\displaystyle {}^{t} [ \sigma ] = {}_{t}^{t} [[ C ]] : {}^{t} [ A ]$     (7.64)

またその速度形(客観速度としてJaumann速度を使用)は、


$\displaystyle {}^{t} [ \grave{ \sigma^J } ]
=
{}_{t}^{t} [[ C ]] : {}^{t} [ \grave{ A^J } ]$     (7.65)

有限変形微小歪み問題を仮定すると、 各種の応力や歪みの客観速度は同一視できる (式 6.116 および 6.83 参照)。


$\displaystyle {}^{t} [ \grave{ A^J } ]
\simeq
{}^{t} [ \grave{ A^O } ]
\simeq
{}^{t} [ \grave{ A^C } ]$     (7.66)


$\displaystyle {}^{t} [ \grave{ \sigma^J } ]
\simeq
{}^{t} [ \grave{ \sigma^O } ]
\simeq
{}^{t} [ \grave{ \sigma^C } ]$     (7.67)

また、弾性変形速度テンソル $ {}^{t} [ D ] $ との関係 (式 6.71 参照)より、


$\displaystyle {}^{t} [ \grave{ A^C } ]
=
{}^{t} [ D ]$     (7.68)

したがって、


$\displaystyle {}^{t} [ \grave{ \sigma^J } ]
\simeq
{}_{t}^{t} [[ C ]] : {}^{t} [ D ]$     (7.69)

さらに、対象が金属材料の場合、 一般に弾性歪みは微小であり、 また塑性歪みの体積変化成分がないので、 Cauchy応力のJaumann速度 $ {}^{t} [ \grave{ \sigma^J } ] $ と 相対Kirchhoff応力のJaumann速度 $ {}_{t}^{t} [ \grave{ \tau^J } ] $ との差 $( \mathrm{tr} \; {}^{t} [ D ] ) {}^{t} [ \sigma ] $ は微小である。 したがって、剛性行列を対称にするために これらを置き換えることが出来る。


$\displaystyle {}_{t}^{t} [ \grave{ \tau^J } ]
\simeq
{}_{t}^{t} [[ C ]] : {}^{t} [ D ]$     (7.70)

Truesdel応力速度 $ {}_{t}^{t} [ \dot{S} ] $ との関係は、 式 6.113 より、


$\displaystyle {}_{t}^{t} [ \dot{S} ]$ $\textstyle =$ $\displaystyle {}_{t}^{t} [ \grave{ \tau^J } ]
- {}^{t} [ D ] \cdot {}^{t} [ \sigma ]
- {}^{t} [ \sigma ] \cdot {}^{t} [ D ]$  
  $\textstyle =$ $\displaystyle {}_{t}^{t} [[ C ]] : {}^{t} [ D ]
- {}^{t} [ D ] \cdot {}^{t} [ \sigma ]
- {}^{t} [ \sigma ] \cdot {}^{t} [ D ]$ (7.71)

次に、応力積分の取り扱いについて述べる。 有限変形微小歪み問題では、応力速度として 相対Kirchhoff応力のJaumann速度(共回転速度)を用いているので、 微小変形微小歪み問題を仮定した応力積分により計算された 応力増分 $ {}^{t + \Delta t} [ \sigma ] - {}^{t} [ \sigma ] $ は、 共回転成分での増分 $ \Delta [ \sigma^J ] $ である。 これからCauchy応力の固有時間微分の増分 $ \Delta [ \sigma ] $ を評価するには、 Cauchy応力の固有時間微分とCauchy応力のJaumann速度(共回転速度)との関係式 6.105 と Cauchy応力のJaumann速度と相対Kirchhoff応力のJaumann速度との関係式 6.110 を用いる。


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Hiroshi KAWAI 平成15年4月19日